追悼 チャーリー・ワッツ(ザ・ローリング・ストーンズ)
エルトン・ジョン・バンドのナイジェル・オルスンに
ビリー・ジョエル・バンドのリバティ・デヴィート、
ジョン・メレンキャンプ のところのケニー・アロノフ、
ホール&オーツと
ブライアン・アダムスが取り合ったミッキー・カリー、
(ブルース・スプリングスティーン&)
E.ストリート・バンドのマックス・ワインバーグ。
私が愛する、バンド・スタイルで作品を残してきた
スターたちに共通していました。
そこにはスタジオでもライヴでも抜きん出た
ビートを叩き出す魅力的なドラム奏者がいるのです。
もちろん、TOTOのジェフ・ポーカロと
ザ・ナックのブルース・ゲイリーも大好きでしたし、
かなり後になって
ディープ・パープルのイアン・ペイスを
心底すごいと感じました。
誰も彼もが、一言でいえばみな独創的なのです。
その感覚は洋楽ロックを聴き始めた
かなり早い時期に聴き馴染んだドラマーによって
植え付けられていたものでした。
そう、ザ・ビートルズのリンゴ・スター、
ザ・フーのキース・ムーン、
レッド・ツェッペリンのジョン・ボーナム。
そしてもちろん、チャーリー・ワッツです。
2021年7月22日に、秋からのローリング・ストーンズの
<ノー・フィルター・ツアー>の再開が明らかになりました。
ところが8月5日には体調面を考慮し
チャーリー・ワッツの不参加が報じられます。
珍しいこともあるんだなーそう感じたのは
それほどストーンズのステージにワッツは不可欠であり、
ドラム・キットに彼が座らないなら
ツアー自体ないはずだとさえ思っていたからでしょう。
8月24日に、チャーリー・ワッツさんの
80歳での永眠が伝えられました。
WEB上に溢れ出た関連記事から
ワッツ氏をもっと知る上で有意義だったいくつかのこと。
ストーンズに及ぼした演奏面での独創性に関して、
彼自身があげていたのがバックビートでした。
裏拍/弱拍<4拍子の場合、2拍目と4拍目>を
強く意識するシンコペーションのスタイル。
ストーンズの、ロックとブルースとR&Bを融合したサウンドに、
他のバンドとは異なるジャズのスウィング感を盛り込むことで、
結果彼らのロックン・ロールには
ダンス・ミュージックとしての生命力が宿り続けた。
60年にも及ぶ期間に様々な大きな変化を遂げながらも
ストーンズらしい不変の要素として大事だったのが
チャーリーのスウィング感だったーそんな指摘でした。
もうひとつ、ロックン・ロールが
文化・社会現象として重要となった背景にある外観の点。
つまりファッションに象徴されるワッツ氏の人物像です。
06年にイギリスのデイリー・テレグラフ紙は、
彼を世界のベスト・ドレッサーに選び、
またヴァニティ・フェア誌はやはり
<好ましいファッションの人物>
の殿堂入りリストに加えているように、
ワッツ氏にはきちんと仕立てた服装へのこだわりがありました。
ショー・ビジネスのきらびやかな世界よりも
落ち着いた生活様式を好んだのは、
妻のシャーリーさんとアラブ種馬の飼育場を経営し、
ノース・ウェールズの牧羊犬協会理事を
務めていたことからもうかがえます。
伝えられているように元来は、
チャーリー・パーカーやジェリー・ロール・モートン、
セロニアス・モンクらのSP盤をこよなく愛した
根っからのジャズ愛好家であり、
ドラマーを志したのもジェリー・マリガンのレコードでの
チコ・ハミルトンに憧れたのがきっかけ。
初めて観たチャーリーのスティックさばきが
ロック・ドラマーのそれとはまったく違っていたのが
すごく新鮮だったのを思い出します。
ソロでの作品やステージ活動では、
ジャズ・プレイヤーに徹していたのも納得いきます。
そうしたワッツ氏のたたずまいが、
ストーンズというバンドにもたらせた
重層性や深みは計り知れません。
多くがバンドの不可欠なキャラクターとする
ミック・ジャガーとキース・リチャーズのふたりは共に、
ストーンズがストーンズであり続けるのには
チャーリーがいなくてはならないと考えていました。
具体的に、リチャーズは
”もしチャリーがいないなら、ストーンズもない。
彼なしで続けたくはない”と語っています
<04年6月にワッツ氏の咽頭癌が判明/回復後に述べた所感>。
ニューミュージカル・エクスプレスの
WEBでの追悼記事<21年8月24日更新>の
締め括りのフレーズは、大変印象的でした。
”彼だけのリズムの響きこそが、シンプルで鮮明なメッセージだ。
派手ではなかったが、決して誰にも代えられない。
チャーリー・ワッツは、ただ一人である”
思い出話。今から39年前。
1982年のヨーロッパ・ツアーでのパリ公演に合わせて、
かつての全米トップ40の構成・演出担当プロデューサーだった
岡田三郎さん(故人)に同行し、
私はミック・ジャガーとキース・リチャーズの
独占インタビューの場でマイクを持つ係を担当しました。
詳述は避けますが、取材自体が綿密に予定を組んだものではなく、
実現性は現地・現場の様子次第という
不透明かつ不安定な中で敢行されたものでした。
とてもたくさんの予期できないことが起きつつ
結果的に両者の話が訊けたのですが、
まだまったく状況がみえない時点で
ストーンズ一行が投宿するとされた
超豪華ホテルのバーにて、合流したアメリカ人のカメラマンと
”どうなんだろうねえ”とか言ってた時に、私が
”だいたいストーンズが
もうパリに来てるかどうどうかわかりませんよね?”
と不安を口にすると、カメラマン氏は
”いや、来てるよ。そこでチャーリー・ワッツが飲んでる”。
カウンターに一人、パリっとした
お洒落なスーツ姿の
見るからに英国紳士風の男性がいるのが目に入りました。
当時すでにとても年上のイメージだったので
余計に老人に感じられたものの、
にじみ出る渋さが実にスタイリッシュでした。
本物のストーンズに、この距離で生で接遇したその瞬間の
大きな驚きと新鮮な感動は、今でも忘れられません。
2021年8月28日 記 矢口清治
*追記 バンドの公式ツイッターにて、
8月27日にチャーリー・ワッツさんに捧げての
2分間の動画が公開されました。
若き日々から老成した姿までを愛情をこめて記録したもので、
最後のショットでは愛用のドラム・キットに
”閉店”のボードが掛けられています。
その2日前、木曜日に運営会社コンサーツ・ウェストは
ツアーを予定通り行なうと発表しました。
演奏を止めない、音楽は続く
ーそれが彼らから彼へのメッセージなのでしょうね。
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