新連載「1422うまうま警察」
老警部は何十年にわたって競馬の結果を「捜査」してきた。
理詰め通り進むことがあれば、
説明の施しようのない案件もあり捜査は難航。
麻布台の1422うまうま警察捜査本部。
老警部は捜査員を前に立ち上がった。眉間にはシワが寄っていた。
七三のヘアスタイルが
ボマードによって、薄暗い部屋でも光沢を帯びる。
「えー、先日の中山牝馬S、ニシノブルームーンが勝ちました。
重賞初制覇でありました。
思えば去年春の中山で500万、1000万を2連勝、
この時期は非常に相性がいいようであります。
それから
先週土曜中山8Rで2着だったテイクバイストーム。
3歳春の中山で初勝利、
4歳春の中山で2勝目、
そして5歳になった今年の初戦で2着。
前走11着から巻き返しました。
この馬も春の中山はよく走るようであります。
これらの出来事は偶然か必然か‥
そこで私は、
1年前の春の中山競馬は
どうなっていたのか、
つぶさに調査を開始したのであります。
そこである重大な出来事を見落としていたことに気付いたのです。
ニシノブルームーンは、
去年3月21日土曜、中山9R・鎌ヶ谷特別を勝ちました。
晴れた日の午後のことでありました。
同じ日の次のレースの結果をみてみますと‥
10R アクアマリンS
1着 マイネルファルケ2着 ウェディングフジコ‥」
マイネルファルケ!
ウェディングフジコ?
15人も入れば一杯の会議室がざわめいた。
「マイネルファルケは
先週日曜の中山10Rで2着、
ウェディングフジコは
中山牝馬Sでニシノブルームーンにつぐ2着。
去年起こったことが
今年も繰り返されていたのであります」
老警部はコップの水を口に含んだあと続けた。
「重賞レースでも、同じ馬が2年連続で連対するケースがあります。
記憶に新しいところでは
ネヴァブションが
AJCC2連覇、
マツリダゴッホは
オールカマー3連覇、
ミヤビランベリは
七夕賞を2連覇しております。
これも「再走」を裏付けるものになるのではないかと思うのであります
なぜ彼らが「再走」するのか‥
馬の1年は人の何年分にも相当するはずであります。
はっきりとした理由は
定かではありません。
私たちが人間である以上、
馬が何を感じ何を思い走っているかはなかなか理解できないものであります。
それでも我々は
この難題に立ち向かわなければならんのです」
3月21日、中山9レース浅草特別、
去年春の中山で4,2着のモンテアルベルトを
重要参考馬とすべく、
老警部は、中山競馬場に張り込むことにしたのであった。
(つづく)
※登場人物、団体名はフィクションです。
作・木村季康
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